【2025年4月10日(木)】助産院 海とつき 内覧会を実施 12日(土)にはオープニングセレモニーを開催
助産院の海とつき(真鶴町岩351-4)が内覧会を実施した。
「海とつき」の名前は公募で、真鶴の海と「十月十日」に由来する。今回は、院長の岩田美也子さんにご案内いただいた。
岩田さんは30年にわたって助産師として活動し、2000人以上の赤ちゃんを取り上げてきた。大学病院での業務にも、独立しての助産院業務にも精通している。
一方、足柄下郡(真鶴町・湯河原町・箱根町)には出産施設が無かった。これまで妊婦は、小田原市の病院に行く場合が多かった。
約5年前、地域の有志が助産院設立に向けて動き出し、経験・実績ともに豊富な岩田さんに白羽の矢が立った。
海とつきは2階建てで入院室が5室あり、そのほかに診察室や分娩室、沐浴室や台所などを備えている。
助産師を責任者とする施設で、医療介入の不要な出産が可能となっている。産前産後の支援に特に力を入れている印象だ。
これまでの内覧会では、助産師や出産経験者からは「うらやましい」という声が多くあがったという。長年、岩田さんが感じてきたさまざまなことが活かされているからだ。
例えば、部屋の広さや家具の配置。妊婦が落ち着いて過ごせつつ、家族が滞在できるように配慮されている。部屋での出産にも対応できるとしている。
例えば、トイレ。トイレでいきむ事例もあったことから、スタッフが横で支援できるだけの十分な広さを取っている。
例えば、水中分娩設備。妊婦の希望をかなえるために設置した。通常の浴槽よりも深く、出産しやすい造りとなっている。
岩田さんが特に意識していることは「白くいる」ことだという。
出産はひとりひとり異なる。決まった型(=岩田さんが考える色)がその人に当てはまるとはかぎらない。だから、妊婦やその家族に寄り添った出産を目指している。
出産後のケアにも力を入れていく。健診をはじめ、母乳ケア、産後ケアなどだ。「助産院はお母さんたちの相談所のようなところ」と岩田さんは語る。
地域とのかかわりも大切にする。施設が空いているときにはワークショップを開催したり、高齢者や子供たちが立ち寄れる場所にもしていきたいとしている。
「『採算は取れるの?』とよく聞かれます」と岩田さんは苦笑いする。「私の年金があるからできているという側面もあります」と正直に語ってくれた。
岩田さん自身、「やれて10年」と言う。それまでに、若い助産師を育て、海とつきを軌道に乗せたい考えだ。
岩海岸に打ち寄せる波の形がすべて違うように、出産も十人十色。少子化の時代だからこそ、ひとりひとりに寄り添ったお産が、地域の未来を作っていくのかもしれないと感じた。